【保険系フィンテック】急成長する医療保険系スタートアップ「Alan」が大手VC「Index Ventures」から資金調達 -フランスで王者アクサへの挑戦

2018年4月10日、フランスの医療保険系フィンテック企業「Alan」が2,300万ユーロの資金調達したことが発表されました。Alanは2016年に設立されたばかりのスタートアップですが、1986年以降、フランスで初めて保険事業のライセンスを取得し、医療保険業界に新規参入した企業として以前から注目を集めていました。フランスの医療保険業界では、長年新規参入企業がなかったためアクサ(AXA)などの保険会社は安定したマーケットシェアを維持してきましたが、急速に顧客を増やしているAlanは、既存の保険会社にとってはまさに「破壊者(ディスラプター)」となり、脅威になりつつあります。フランスの医療保険業界は360億ユーロもの市場規模があり、もしAlanがシェアの5%だけでも奪うことができれば、18億ユーロもの収益を得ることができます。
なお、保険系のフィンテックは、「Insurance(保険)」と「Technology(技術)」を合わせたInsurTech(インシュアテック)と呼ばれています。


Alanは、同社自身のことを「ヨーロッパ初のデジタル保険会社」と位置付け、高品質なユーザーエクスペリエンス(カスタマーエクスペリエンスとも言う)、割安な保険料、しっかりした保障内容を武器に「医療保険業界を革新する」との野心を抱いています。


Alanは、中小企業の従業員向けにオンラインで簡単に手続きができる医療保険を提供しています。保険契約や保険料の契約者・支払い元は、従業員ではなく中小企業自身(人事部や福利厚生部など)で、月額保険料は一人当たりたったの55ユーロと、アクサ、アリアンツ(Allianz)、Generali(ゼネラリ)等の競合他社に比べても安価とされています。なお、フランスでは、福利厚生制度として雇用主が従業員の医療保険を契約することが法令上要求されていますので、中小企業からすると価格は安いに越したことがありません。


Alanのサービスが持つ高いユーザーエクスペリエンス、割安な保険料は中小企業の関心を引き付け、今やフランス国内に中小企業900社に勤める従業員7,000人超がAlanのサービスを使っています。この市場拡大スピードは、設立後2年の保険会社としては異例のスピードと言われています。


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Alanの共同創設者兼CEO Jean-Charles氏
ヘルスケアというものは、ユーザーに優しく、アクセスしやすい性質であるべきだが、今はそうでない。保険は複雑で、保険会社と消費者の間に「情報の非対称性」がある。私たちは、保険をあるべき姿にするためAlanを設立した。
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今回のAlanへの出資ラウンドでは、ヨーロッパのベンチャーキャピタル業界でも有名なVCである「Index Ventures」が率いており、IT専門VC「Xavier Niel」、「OpenCNP」、「Partech」、「Portag3 Ventures」が参加しています。なお、「OpenCNP」、「Partech」、「Portag3 Ventures」は、以前にもAlanに出資しています。
Index Venturesは、「Alanは、一般的な商品より広範な保障内容で、透明性が高く、また、割安な保険料を消費者に広めていきたいと述べている。フランスの医療保険業界は360億ユーロの市場規模をもっており、大きな機会がある」とAlanのシェア拡大に大きな期待感を持っています。


今回Alanが調達した資金は、同保険会社の従業員を現在(20数名)の4倍に増やし、オペレーション能力の拡充に使用される。
Alanの経営計画では、今後3年間で1万人超の顧客を獲得することが目標の一つとされています。商品についても、現行の医療保険にくわえて新商品も投入するほか、フランス以外の市場への進出も検討されています。


今、ヨーロッパでは、フランスのスタートアップ企業に注目が集まっています。
ロンドンのVC「Atomico」の調査によりますと、2017年の国別スタートアップ企業の資金調達件数でフランスは753件と、イギリスの728件をおさえて、ヨーロッパで最も多くの件数を記録しました。(資金調達件数ベースでのカウントであり、調達資金額でのランキングではございません。)
フランスのスタートアップが躍進した背景には、2017年にルペン候補と対戦して勝利したエマニュエル・マクロン大統領(Emmanuel Macron)の経済政策があります。マクロン大統領は、経済相時代から経済政策に力をいれていましたが、大統領就任後には「フランスをスタートアップの国家にする」とのスローガンを掲げてIT業界へのテコ入れとして、ITのエンジニアや起業家が同国に入国しやすくするビザを新設しています。


フランスでは、官民共同でスタートアップ業界を盛り上げる動きがあります。
有名なものとしては、世界最大級のインキューベーション施設「Station F」やスタートアップの起業を支援する枠組み「La French Tech」があります。
機会を見てフランスのフィンテック政策についても記載したいと思います。



関連記事「「インシュアテック」に関する保険会社CEOの見解、欧保険会社の動向」はこちら↓
http://fintechnewslondonfintechjagi.sokuho.org/article/insurtechlondondigitalinsuranceinnovationdisrupttransformations.html


(Alan HP)
https://blog.alan.eu/about

(Station F HP)
https://stationf.co/fr/

(参照:Financial Times「Index Ventures backs French health insurance start-up」2018.4.10)
https://www.ft.com/content/34e2ea4e-3c07-11e8-b9f9-de94fa33a81e

(参照:Financial Times「France looks to steal UK tech’s European crown」2017.11.30)
https://www.ft.com/content/6d10b10a-d503-11e7-8c9a-d9c0a5c8d5c9



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