「インシュアテック」に関する保険会社CEOの見解、欧保険会社の動向


【保険会社CEOの見解】
PwC(PricewaterhouseCoopers)が世界の保険会社100社のCEOを対象に実施したアンケート調査結果(2018年3月14日発表)では、他業界のCEOに比べて保険業界のCEOは技術革新のスピードの速さにより高い懸念を抱いていることが判明しました。

<主要な判明点>====================================
1.保険会社のCEOが抱く懸念事項ベスト3は、「規制関連(95%)」、「サイバー犯罪(93%)」、そして「技術革新の早さ(85%)」。「技術革新の早さ」については、他業界のCEOより強く懸念。

2.保険会社のCEOのうち、8割超がデジタル人材・スキルの低さに懸念を抱いている。「ITスキルを持つ適切な人材採用が容易」との回答は19%のみ。

3. 保険会社のCEOのうち、5割(49%)が事業の成長と利益率向上のために、12ヶ月以内に戦略的な提携を計画。

4.保険会社のCEOのうち、78%が消費者行動の変化は各保険会社の成長にとって障壁(脅威)となる可能性があると回答。

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世界経済ではデジタル化が加速しており、消費者の嗜好が今までより早い速度で変化しています。近年、一般消費者・企業からは、デジタルチャネルやサイバー保険の需要が高まる等、保険会社は、このような消費者の変化を「新たな機会」として捉えていると、PwCは分析しています。

これらを踏まえ、PwCのUK insurance leaderであるJim Bichard氏は、「保険業界は、世界経済の中でも最も技術革新が進む業界の一つである。新技術は、保険会社をサイバー犯罪等の新たなリスクから守る反面、事業成長の加速材料にもなる」とコメントしています。しかし、消費者行動の変化が早いことを踏まえ、「保険会社はデジタル技術の取得、消費者目線の経営等、長期的なトランスフォーメーションの必要性を侮るべきでない」と、デジタル技術が与える影響に警鐘しています。

Bichard氏は、調査レポートにて下記のように結論付けています。
「保険業界は、革新のスピードが遅い典型的な業界ではあるが、もはや無駄にしている時間はない。(アンケート調査では)保険会社のCEOは、デジタルトランスフォーメーションを怠った場合、リスクに晒されることを認識している。競争性が高い保険業界で成功するためには、成長可能な組織に成る必要がある。」「保険ビジネスは、保険対象のリスクを把握することにより成り立つ事業であるが、予測分析や人工知能(AI:artificial intelligence)等の先端技術は、リスク把握能力を強化できる技術である。保険会社のCEOは人材と技術を統合し、「超人的な(bionic) 組織」を構築すべきである。」


デジタル革命時代における保険会社経営 -
デジタル革命時代における保険会社経営 -

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【InsurTech企業】
世界の最大手保険会社は過去20年間ほぼ変動が無く、保険業界にはアマゾンやUberのような、ビジネスモデル大きく変革するディスラプターは現れていません。しかし、世界にはInsurTech企業と呼ばれるスタートアップが1,000社程存在する(Oxbow Partners)とされ、これらの企業はビッグデータ分析技術により保険会社よりも精緻なリスク査定の実施、人工知能によるスマートで迅速な意思決定等、一部の保険業務については既存の保険会社よりも優れていることから、保険業界における「ディスラプター」になると見る専門家もいます。Oxbow Partnersは、「新技術の導入にフォーカスしない保険会社は、競合他社に比べて効率性が低下し、リスク査定の適正さも劣ることになる」と、ディスラプトされないよう保険会社にデジタル化を促しています。


<保険業界での活用が期待される技術例>
1.IoT(internet of things:モノのインターネット):住宅に備え付けるスマートデバイスが、物の破損や水漏れ等を事前に感知し、ユーザーのモバイルに通知することで損害発生前に抑制する。損害の事前抑制により、保険会社は保険金の削減ができる。

2.ブロックチェーン(Blockchain):保険ビジネスへの影響が最も大きい先端技術と見ている専門家もいる。ブックチェーンの利用方法につき、研究開発(R&D)する保険会社も少なくない。


保険業界では、NYに本拠地を置く「Lemonade」が有名なディスラプターですが、Oxbow Partnersは、「新たに保険市場に参入し成功することは容易ではない」との見解を述べています。

そうした中、保険会社に挑戦する立場ではなく、保険会社にデジタルサービスや技術を販売するInsurTech企業が多く見られます。具体例では、保険会社のデータ活用を支援するAtidot、AIによるリスク分析を行うCytora等があります。他にも多数の企業がありますので、ご興味のある方は下記のOxbow PartnersのHPをご覧下さい。


(Oxbow Partners HP)
http://www.oxbowpartners.com/impact25/


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【ヨーロッパの保険会社のデジタル化方法】
近年、ヨーロッパの保険会社は、様々な戦略を用いてデジタル化を目指しています。社内ベンチャーを立ち上げることも一案ではありますが、多くの関係者は、一従業員でありながら一起業家として働くことの両立は困難であり、「成功しにくい方法」と評価しています。保険会社の主なデジタル化方法を記載しています。

1.ラボ
イギリスに本社を置くAvivaは、ロンドンとシンガポールに「アビバデジタルガレージ(Aviva Digital Garage)」を設置し、新たなアイデアを外部から取り込んでます。この取組みによる成果の一つとして、新規顧客からの質問数の減少が挙げられます。Avivaは、ヨーロッパの中でもデジタル技術によるイノベーションに注力している保険大手の一つとされています。


2.戦略投資(マイノリティ投資、買収)
保険会社の各部署との協業を目的とした投資を行うベンチャーキャピタルファンドを活用するケースもあります。Aviva、Axa、Allianz、XL Catlin、MetLife等がベンチャーキャピタルファンドを設置しスタートアップにマイノリティー投資を実施しています。

その延長線上として、「買収」という方法もあります。去年には、アメリカの「Travelers」が中小企業に保険を販売する「Simply Business」を4億ポンドで買収したという事例もあります。


3.新ビジネスの開発
InsurTech企業向けサービスを提供し、そこから生み出された利益を獲得するという方法があります。典型的な例が、Munich Reです。

Munich Reは、InsurTech企業の中でも有名なBought by Many、Neos、Wefoxをタイアップさせて保険を販売し、保険に係るリスクをMunich Reが取るという方法を採用しています。この方法は両方にメリットがある正にWin-Winの関係で、InsurTech企業はMunich Reから資金調達でき、Munich Reは新たなビジネスの流れを構築することができます。


上記の通り、保険会社のデジタル化の方法は様々ですが、多くの実務担当者は、「どの方法を採用するにしろ、保険会社自らのカルチャーを変える必要がある」と、まずはイノベーションが発生しやすい環境を整えることの重要性を説いています。そのためには、現在のタスクフォースを見直すなど、行うべき課題が山積していることが保険会社の実情のようです。


(PwC UK 「Insurance CEOs extremely concerned about pace of technological change but surprisingly optimistic on growth」)
https://www.pwc.co.uk/press-room/press-releases/Insurance-CEOs-extremely-concerned-about-pace-of-technological-change-but-surprisingly-optimistic-on-growth.html

(PwCレポート 「21st Global CEO survey: The Anxious Optimisy in the Corner Office」)
https://www.pwc.com/gx/en/ceo-survey/2018/pwc-ceo-survey-report-2018.pdf

(Aviva Digital)
https://digital.aviva.com/

(Bought by Many)
https://boughtbymany.com/

(Neos)
https://neos.co.uk/

(Wefox)
https://www.wefox.de/

(参照:Financial Times「Big insurers convert disrupters to collaborators」2018.3.26)
https://www.ft.com/content/da9f2cde-0a63-11e8-bacb-2958fde95e5e



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