英国の投資協会がアクセラレーターを開始 -資産運用業界で加速するイノベーション


2018年2月19日、イギリスの資産運用(アセマネ)会社240社で構成する投資協会(Investment Association)が、資産運用業界でのイノベーション需要に応えるITソリューションを開発するフィンテック企業・スタートアップに、育成を促進するアクセラレータープログラムを提供することを発表しました。業界団体がアクセラレーターを提供することは珍しく、同投資協会と加盟する資産運用会社のフィンテックへの関心は非常に高いと言えます。

「VeloCity」との名前が付けられているこのアクセラレータープログラムでは、一年に2回のタームを設けてそれぞれ4社から8社のフィンテック企業を支援し、フィンテック企業が開発途上のサービス実用化を促します。VeloCity最初の支援対象企業は、今年の第2四半期(4~6月)にプログラムを開始する予定で、6カ月間支援を受けられます。また、支援期間後には、デモデイ(Demo Day)という資産運用会社、投資家向けのイベントが開催され、そこで評価されたフィンテック企業は、サービスを納品する顧客(資産運用会社)や資金調達の機会が得られます。
資産運用業界で利用可能なサービスが支援対象とされていますが、同投資協会は、特に「人工知能(artificial intelligence:AI)」、「マシーンラーニング(machine learning)」、「分散型台帳技術・ブロックチェーン(distributed ledger technology:DLT、Blockchain)」、「クラウド」、「ビッグデータ分析」に強みがあるフィンテック企業に関心を示しています


投資協会のチーフであるChris Cummings氏は、VeloCityの運営開始は先進IT技術を資産運用業界に取り入れるスピードをアップさせる「カタリスト(きっかけ)」になり、また、フィンテック企業は資産運用業界のエコシステムに組み込まれるとのコメントを発表しています。ここでいうエコシステムとは、資産運用会社、政府、金融監督当局(FCA:Financial Conduct Authority)、投資協会、フィンテック企業、投資家、コンサルタント、アクセラレーター等が相互に密接に関連し合う仕組みのことを言います。このエコシステムが成熟すると、企業の枠組みを超えた交流が促進され、イノベーション(革新)が発生しやすくなるといわれています。

関連記事「ロンドンは世界最高のフィンテックエコシステム?シリコンバレーとの違いとは」はこちら↓
http://fintechnewslondonfintechjagi.sokuho.org/article/fintechkenshirou180818.html

今回のVeloCity発表時に、フィンテック企業やRegTech(レグテック・規制関連技術)サービスを扱う企業も同投資協会に加盟可能にする可能性を示唆しています。これにより、イギリス資産業界のエコシステムが更に成熟することが期待されます。
資産運用会社以外の企業の加盟を受け入れることについては、今までの伝統とは異なる大きな決断との見方も報じられています。例えば、日本の銀行業界や保険業界などに、スタートアップ企業が加盟すると想像すると違和感を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした柔軟な発想やそれを実現する実行力を、私たち日本人も見習うべきかもしれませんね。

イギリス政府は、投資協会のアクセラレータープログラム開始を祝うコメントを出しています。財務省や金融街シティを担当するJohn Glen下院議員は、「イギリスの資産運用業界には93,500人もの人が働く重要なセクターです。VeloCityは、資産運用業界と資産運用関連のイノベーティブなサービスを開発するフィンテック企業にとって魅力的なニュースになるだろう」と、イギリスがヨーロッパの資産運用業界の中心地であり続けるとの意欲を見せています。

<資産運用業界でのフィンテックに関するアンケート結果>
昨年実施された、資産運用会社507社へのアンケート調査では、回答企業の中で最優先の課題とされたのが「デジタル化(Digitalization)」となりました。回答企業は先進IT技術を利用することで、オペレーション効率化、運用パフォーマンス向上、リスクマネジメント精度向上などを目指しているということが分かっています。
しかし、資産運用業界ではフィンテックの利用が上手く進んでいないとの調査結果もあります。資産運用会社は、銀行業務領域などの一般的なフィンテックのスピードに追い付くことが容易ではなく、たったの4割の企業のみが「自社は十分なスピード感をもってフィンテック活用に取り組んでいる」と回答しています。
投資協会のChris Cummings氏が述べたように、VeloCityが資産運用業界のイノベーション加速のきっかけとなるとともに、銀行業界や保険業界など、他の金融業界、金融機関への刺激になれば、社会全体としてもデジタル化が進むのではないでしょうか。
イギリスの金融業界のや政府・金融当局の動向については、先進的な取組みが多いことから世界中の金融機関、政府・金融当局も注目しています。VeloCityの発表を知ったどこかの国の業界団体が同様にアクセラレータープログラムを開始するかもしれません。それが、日本であれば本当に嬉しく思います。

関連記事「イギリスのフィンテック投資は世界第2位 -投資家を魅了し中国を追い抜く」はこちら↓
http://fintechnewslondonfintechjagi.sokuho.org/article/vcinvestmentukeuchinainnovatefinancebrexitdigitalinnovation.html

(参照:Investment Association「INVESTMENT ASSOCIATION TO LAUNCH VELOCITY – FINTECH ACCELERATOR FOR THE ASSET MANAGEMENT INDUSTRY」)
https://www.theinvestmentassociation.org/media-centre/press-releases/2018/investment-association-to-launch-velocity-%E2%80%93-fintech-accelerator-for-the-asset-management-industry.html


「なるほど!」と思った方は、「いいね!」お願いします。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


今月の人気記事ベスト20

商品紹介