イギリスのフィンテック投資は世界第2位 -投資家を魅了し中国を追い抜く

イギリスに拠点を設置しているフィンテック企業、金融機関、ITベンダー等で構成するアソシエーション「Innovate Finance」の調査結果によれば、2017年にイギリスのフィンテック企業が調達した資金は18億ポンドに上ることが明らかになりました。2016年は7.04億ポンド程度であったことから、前年の1.5倍の規模となっています。現地メディアでは、2016年6月にイギリスでEU残留・離脱の是非を問う国民投票で離脱票が多数となり、将来の同国経済・政治環境に不確実性が漂うことから、フィンテック業界にとっても負の影響が生じるのではないかと懸念されていましたが、現実には想定ほどの影響は無かったとの見解が報じられています。

また、Innovate Financeの調査によれば、2017年の世界全体におけるフィンテック企業への投資は、2016年より18%少ない144億ドルとなったことから、投資家(金融機関、ベンチャーキャピタル:VC)は比較的イギリスのフィンテック企業に注目していることが分かります。

上記の結果、イギリスにおけるフィンテック企業への投資は、中国を抜き、アメリカに次ぐ世界第2位となりました。なお、2017年におけるアメリカでのフィンテック企業投資金額は、70億ドルとなっており、最も多額の資金調達を得たのはオンライン上で融資・レンディングを扱う「SoFi」で5億ドルとなっています。


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2017年におけるイギリスのフィンテック業界で、最も多額の資金調達を獲得したのは低価格でスピーディな国際送金サービスをあつかう「TransferWise」で、2.8億ドルを調達しました。2番目に大きな資金調達は、中小企業向けにオンライン上で融資・レンディングを提供する「OakNorth」で、2.03億ドルを調達しました。


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上記企業の他には、P2Pレンディングをあつかう有名フィンテック企業「Funding Circle」、オンライン投資プラットフォームをあつかう「Interactive Investor」、チャレンジャーバンクであるモバイル専門銀行「Monzo」が、フィンテック業界の中では相対的に多額の資金を調達しています。

イギリスのフィンテック業界における資金調達のうち、オンライン銀行、国際送金など、銀行業務領域のサービスを展開するフィンテック企業の資金調達が5割を占めていることから、特にこれらの領域への投資家の関心が高いことが分かります。


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上述の通り、イギリスのEU離脱の決定(Brexit・ブレグジット)を受けて、同国の金融業界では不確実性への懸念が高まっていました。フィンテック企業の間では、「有能人材の国外流出」と「EU(欧州単一市場)での事業展開」が直面しうる課題として認識されています。

一点目の「優秀人材の国外流出」について、イギリスがEUを離脱する際に現行認めているEU加盟国からの労働者流入に、制限が設けられる可能性があります。その場合、EU加盟国内の有能人材(ITエンジニア、起業家)がイギリスに流入しにくくなる恐れがあり、デジタル技術力で勝負しているフィンテック企業にとっては重要な問題となります。これらの懸念が叫ばれる中、イギリス政府・財務省・金融監督規制当局(Financial Conduct Authority: FCA)の間でITエンジニア向けの特別なビザ(VISA)を新設するとの議論が聞かれます。(なお、イギリスの金融業界団体「TheCityUK」も、「デジタルスキルビザ」というビザの新設を政府に訴えかけているようです。)3月中旬に財務省が開催したフィンテック会議(カンファレンス)においても、ハモンド財務相(Philip Hammond、Chancellor)が「将来においてもイギリスがフィンテック企業にとって最も魅力的な国となり、世界のフィンテックハブ(拠点)であり続ける」と述べ、フィンテック行動計画(アクションプラン、Fintech Action Plan)を発表していることからも、これらの懸念を払拭したい考えと見られます。


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二点目の「EUでの事業展開」について、現行EUが認める「金融パスポート制度」により、一つの国である金融業務のライセンスを取得したフィンテック企業は他のEU加盟国でも事業を営むことができますが、この権利がEUの離脱により失われるのではないかと懸念されています。この点は、フィンテック企業のみならず、銀行、証券会社、保険会社などの金融機関も同様に懸念していますが、これら金融機関はイギリスとEUがどのような通商協定を締結するかにつき不確実であることを嫌気し、すでにイギリス以外の国でライセンスを取得する手続きを進めています。同様にフィンテック企業の間でも、EU加盟国での事業を既に営んでいるか、計画している場合にライセンス取得手続きを進めているケースが散見されます。イギリスのチャレンジャーバンクで有名なオンライン専門銀行「Starling Bank(スターリング)」は、既にEU加盟国のアイルランドでライセンスを取得しており、金融パスポート制度を使ってEU域内で営業しています。近い将来、TransferWiseを含む多数のフィンテック企業が続々とEU加盟国でのライセンス取得に向けた動きが進むのではないかと予想されています。


上記のように、イギリスのEU離脱に伴う懸念点に対し、フィンテック企業は対策を講じていることから、Starling Bankも「ロンドンはEU離脱に関連する悪影響の脅威に晒されているが、将来にわたってフィンテックハブとしての地位を守り続けるだろう」との予測を述べています。


この勢いが続けば、2018年におけるフィンテック投資についても、イギリスは世界第2位の規模を守り続けられるのではないでしょうか。


図解入門ビジネス 最新FinTechの基本と仕組みがよ~くわかる本 -
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(Starling Bank HP)
https://www.starlingbank.com/


(TransferWise HP)
https://transferwise.com/


(Monzo HP)
https://monzo.com/


(Funding Circle HP)
https://www.fundingcircle.com/uk/


(参考:Innovate Finance「2017 VC INVESTMENT LANDSCAPE」)
https://new.innovatefinance.com/2017investment/?platform=hootsuite


(参考:Financial Times「Venture investment in UK fintech more than doubles」2018.2.7 Martin Arnold)
https://www.ft.com/content/75a4425a-0b63-11e8-8eb7-42f857ea9f09


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